(3)ドミナント・ストーリー/オルタナティブ・ストーリー
では、ナラティブ・アプローチは、臨床の現場でどのように使われているのでしょうか。すこし触れておくことにします。
ホワイト=エプストンは、患者の状況を支配している一般的な物語を、「ドミナント・ストーリー(思い込みの物語り)」と呼んだのです。ドミナント・ストーリーは、患者が置かれている、多くは精神的な苦痛の源泉となっている支配的なナラティブ(思い込みの物語り)だとしています。
例えば、「女性は家庭内で家事をする役割は当然だ」は、各地の家庭で広くみられるドミナント・ストーリー(思い込みの物語り)とされます。
しかし、これを物語と捉えるならば、覆すことができるのです。
家庭内の様々な問題の背景には、往々にしてこうした一般的で真実の思えるストーリーがあります。
ナラティブ・アプローチは、この患者の苦しみの源泉となっているドミナント・ストーリー(思い込みの物語り)発見し、その主役の座から引きずり下ろすことを目指すのです。
ドミナント・ストーリー(思い込みの物語り)に支配され、硬直化した心理状態を探りながら、「オルタナティブ・ストーリー(代替の物語り)」と呼ばれる、ドミナント・ストーリー(思い込みの物語り)とは別の物語を創生し、発見していくのです。
自分のドミナント・ストーリー(思い込みの物語り)を少し変え、気持ちが楽になり、新しい自分の発見につながる。そのことにより、心理の好転のきっかけを掴むことに繋がり、自分自身の大きなリソース(能力的資源)を活用しうる可能性の発見などができれば、きっとストレスを軽減することにも繋がり、結果として、今後の働き方に良い影響を与えることができるのではないかと思えるのです。
介護現場で働く多くの人々のストレスを少しでも軽減できるようなこのナラティブ・アプローチ研修を提供して行くために、今後も勉強を続けていかなければと思っているのです。
参考資料
株式会社ジャパン・マーケティング・エージェンシーのマーケティング・リサーチ
感情シンドローム PHP新書 岸本裕紀子(2012)
あなたの仕事、感情労働ですよね? 花伝社 関谷大輝(2016)